聞く・話す 学ぶしくみを探る

普段意識することは少ないですが、人は常に周囲の情報を取り込み、処理して生活をしています。あまりに巧妙で意識せずに処理が行われるばかりに、この人間の情報処理の仕組みの多くは未だベールに包まれています。また人の学びというのものは、他の動物に比べて高度といわれています。

特に、人のコミュニケーションで重要な働きをしているのが「音声」ですが、この音声をきいたり発音したりする能力の裏には、脳の精緻なしくみがはたらいています。

この人の音声情報処理のしくみを明らかにするため、私たちの研究グループは20年にわたり多角的に研究を積んできました。前半の10年で、人間の学習機構を、後半の10年には日本人の英語学習を題材として学習について研究をしてきました。

最初は知覚のメカニズムから始まり、学習効果の検討、あらゆる年齢の学習、発音と知覚の関係まで、1つ1つ明らかにしてきました。 英語音韻RとLは、日本人には特に困難な音韻であり、成人後の習得は困難と思われていた時期に、成人の学習効果も証明したことは、一大トピックとなりました。その後、RとL以外の音韻学習や、幅広い年齢での学習に関する研究を続けてまいりました。

ここで得られた研究成果と開発された音声技術を用いて、より良い音声コミュニケーション技術への応用、外国語学習方法への実践的な応用も開発しています。

/r/と/l/が聞き分けられない頭の中で正しくない音が再生されている…

この時の脳の状態

fMRIイメージ

成人日本語話者は、英語の/r/と/l/を日本語の/r/の聴覚知覚空間で表現しようとするため、区別が難しい。

●学習前後の脳活動の変化(fMRIの実験結果)

訓練前 訓練後

難しい音韻コントラスト (/r/-/l/) 訓練前

難しい音韻コントラスト (/r/-/l/) 訓練後


●脳活動部位

fMRIイメージ

両側のSuperior Temporal Sulcus/Gyrusと Middle Temporal Gyrusは、音声の複雑な音響特性処理にたずさわっていると考えられています。

fMRIイメージ

Broca's area, Supermarginal Gyrus, Planum Temporraleは、音声生成・認識における、聴覚-発話・発話-聴覚のマッピングにたずさわっていると考えられています。